刑事事件に巻き込まれたとき、「示談(じだん)」という言葉を耳にすることがあります。示談は、被害者と加害者の間で損害賠償などについて合意し、事件の解決を目指す手段の一つです。特に、被害者がいる犯罪(傷害、窃盗、暴行、性犯罪など)では示談が重要な意味を持ちます。
今回は、刑事事件における示談の基礎知識と、示談交渉において有効な示談書を作成するためのポイントを3つに絞って解説します。
示談とは?
示談とは、当事者間で紛争や損害賠償の内容について話し合い、合意(解決)に至ることです。刑事事件では、被害者と加害者が示談することで、刑事事件のみならず、民事上の責任問題も解決することができます。ただし、示談をするときには、法律的に有効な示談書を作成し、双方が合意したことを明らかに示す内容としなければ、あとでトラブルに発展する可能性を残すことになります。
被害者の処罰感情が量刑に影響を与えるような事件では、示談成立は不起訴処分の獲得や刑罰を軽くすることにつながります。被害者との交渉の中で示談が行われますので、出来る限り、事件発生から間もない時期に示談に向けた動きをとることが大切です。
示談のポイント3つ
1. 被害者の意思を尊重し、心情に配慮する
示談交渉では、被害者の心情を無視した一方的な条件提示は逆効果です。誠実な対応が重要であり、弁護士を通じて冷静に交渉を進めることが望ましいです。多くの場合、被害者は加害者と二度と顔を合わしたくありません。性犯罪に代表されるように、被害者が加害者との接触を拒絶することが予想される場面では、弁護士に示談を依頼し、謝罪の意思を被害者に伝えてもらうことは誠実な姿勢といえます。刑事事件における示談交渉の経験十分な弁護士に依頼をして、被害者感情に十分配慮した対応をすることが示談成立のために重要なのです。
2. 示談を形にする「示談書」の作成
口頭で合意しただけでは、後々「言った・言わない」のトラブルになるリスクがあります。そのため、示談書の作成が必須です。示談書を作成するとき、重要なのは、①法的に有効な内容となっているかどうか、②事後的なトラブルや紛争の蒸し返しの余地がない内容となっているか、という点です。示談書の作成には法的な知識が必要ですので、事前に弁護士に相談して形にすることが望ましいです。
3. 示談金の相場を把握しておく
示談では示談金をいくらにするか、という点も重要です。事件の内容によって、示談金には相場がありますので、まずはその相場を把握し、それを軸に具体的な金額を決めていく流れが一般的です。被害者側も相場を調べているケースが多く、そこからあまりに低い金額提示をしてしまうと、それだけで示談決裂になってしまう恐れがあります。金額設定はとても繊細な交渉になりますので、出来る限り法律の専門家である弁護士にサポートを求めてください。
示談書で押さえておくべき点
1. 事件の特定
示談書の中に、何についての示談なのか、事件の特定をしておく必要があります。「何についての示談なのか」が不明であれば、紛争が蒸し返される危険もあります。いつ、どこで、誰が誰に対して何をした事件についての示談なのかが明示されていれば十分です。
2. 示談の内容が明確であること
示談金の金額、支払方法、支払期限、被害届の取下げや処罰感情の有無などを具体的に記載しているのが望ましいです。示談金の支払い方法や支払期限が不明確であれば、のちにトラブルを生む可能性があります。
3. 「今後一切の請求をしない」旨の条項を盛り込む
再度損害賠償請求されるのを防ぐために、「本示談によって全て解決し、今後一切(被害者は加害者に対し)請求しない」といった条項を盛り込んでおくことが重要です。
まとめ
刑事事件における示談は、事件の今後を大きく左右する重要なプロセスです。被害者への誠実な対応を忘れず、法的に有効な示談書を作成することがトラブル回避に繋がります。
示談交渉や示談書作成は専門的な判断が必要になるため、早い段階で弁護士に相談することを強くおすすめします。示談書はネットで雛形を探せばたくさん見つかりますが、どれがその事件にふさわしいものか、その判断は難しいものです。まずは法律相談を受け、示談交渉から示談書作成までの流れやポイントを整理するところからはじめましょう。
示談でお困りの方は、当事務所の無料相談で今後の方針をご検討ください。